フェローシップ岬を読んでみた  アリス・エリオット・ダーク 著 金井真弓 訳

 一冊で なんと800ページに迫る辞書のような本でなんと887gもの重量がある。資産家の家々が共同の所有権を持つ別荘地で暮らす物語り。

 80歳を超える資産家の女性を通して日常で起こる出来事や昔日の思い出を長々と書かれている。3つの物語に分けてもらったほうが話が散漫にならずに済んだのではないかと…作家や哲学教授を生業にした人物が登場するけれど、あまりにも俗物的過ぎて慄く、資産家の役柄としてのステータスとして付けてあるようだ。
 本は重いけど話はすらすらと軽くBGMのようにながめる方がよい。とにかく時間をついやしてくれるために読む方がいいようだ。ちょっと考えてしまうと不自然さが多いことにつかれてしまいそうだ。
 まだ語彙の少ない3歳の女の子ナンに作家の死んだ家族の思い出や父親の死に直面した時の行動などを難しく話すし、墓の周りを跳んだり跳ねたりしながら自由に動き回ることを自由への教育とし不要な躾はためにならないと主人公の作家は考えるのだけど、墓が崩れてナンは骨盤を複雑骨折する。骨折するほどの大きな墓石があるのも不思議だけど注意もしないのも…
 病院へ連れて行きナンの父親と付き添い、何日も看病におとずれるのだけど父親から感謝されないことに腹を立てて、なんて躾のない父親だと罵る。ナンは躾不要だとそれがよい今日言うだと…そしてなんと父親に恋するのは昼のメロドラマのようで次に惨劇があればまさにテレビドラマのシリーズかのようだ。たしかに各話がそんな長さだし、人気のでたシリーズはよく各話の間に違う話題を振り込むのだけど、これも同様な構成のようだ。
 それにしても話題をつなぐのにニューヨークの貿易センタービルのテロをトピックに入れるのはいかがなものだろうか。あまりに多くの方が亡くなったためにトラウマを引き起こさないように映像をネットから削除したほどなのに、この本の物語りには全く不要なトピックとして挿入する配慮のなさを感じる。もっともその無神経さがこの本の根底なのかもしれない。