1979年に書かれた英国の女流作家の作品で女性らしいほのかな優しさが、テムズ河に浮かぶ平底船で暮らす人たちを包んでいます。
船の中で暮らすのは贅沢かのように思っていたのですが、出てくる人たちは貧しい方ばかりです。ロンドンはチェルシーの桟橋に繋がれていて、2023年現在をグーグルマップで観ると何隻は繋がれているようです。でも船の中の写真を見る限り、結構リッチなつくりなので、描かれた1960年代とは随分と違うのでしょう。ちなみにチェルシーと言えば有名なサッカーチームがあるところです。
物語りは母と姉妹の船の生活を中心に展開し、時代の波に押されながら1隻また1隻と陸に上がる哀愁漂う話です。『日の名残り』やスコットランドの小学校を舞台にした古い映画などを思い出します。英国というのは何か日本の情緒にある襞のようなメランコリックな部分があるように思います。そう言えば、蛍の光もスコットランド民謡でしたね。
日々の中で好きな暮らしをするにしても、皆が皆同じではなく、つれあいの中にも好みはあるわけで、人々の心のふれあいや反駁もあり、その表情が細かいシチュエーションのなかに描かれています。