パリ環状通りを読んでみた  パトリック・モディアノ 著 野村圭介 訳

  作家は1945年生まれのフランス人でノーベル賞をもらっている。何冊か読んだ本はこの小説の雰囲気を醸している。


 物語に脈絡はなく裕福ではあるけれど胡散臭い人たちの日常が描かれており、その空気感というか風情というか雰囲気というか空間がまとわりついてくる。日常的な生活感などというものは微塵もなく、父と私でさえ何者なのかもわからない。
 倦怠感を引き摺りながらも奇妙な事が起きているのだけど、次元の狭間に落ちたように文章に流されてしまう。なんだか知らないまま高地に来てしまい、薄い酸素に気づかずにちょっと朦朧としながらも度数の高い蒸留酒を飲んだような気がする。