チェロを認知症や自閉症の方々、癌末期の患者さんに奏でながら手当を探る記録であり、音楽と人生を紡ぐ詩である。
パリの老人ホームにあるナラの木の風情から話は始まる。チェロの響きが怒りを忘れさせ穏やかな心地を作り出し、生きる活力を生み出してくる。チェロには低い音から高い音まで幅あって力強さもありながら郷愁を帯びた淡さもあるのが不思議であり、それが体内に浸透しやすいのだろうか…
若い頃はエレキギターやビートの強い電子音楽などに浮かれていたものだけど、齢を重ね白髪が多くなるにつれてアコースティックな響きに浸ることが増えていった。サラエボもチェリストだし、ゴーシュもまたセロ弾きだった。チェロは人を癒すのかもしれない。
チェロの響きで病が治るわけでは無いけれど、患者さん一人一人の心の安静がその方の人生とあいまった物語が詩を織りなしている。