生き急ぐを読んでみた  ブリジット・ジロー 著  加藤かおり 訳

  事故で先立たれた夫を偲んで、もしも…を繰り返しながら昔日を思い起こす物語り。


 題名は生き急ぐとなっているけれど、亡くなった夫は自分の好きなことを生業にしていて、あくせくしている様子もなく何かに追われているような焦燥感もない。しかも好きなバイクに跨っての自損事故だったから、なぜ生き急ぐなのだろうか。ルー・リードの本を読みかけでその題名とつなげているけれど…
 もしもの仮定の多くは著名人を出して何かしらの因果関係を結びつけているけれど、著名人を出すことで本の構成を形取っているのは、なんだかwebのSEO対応のように見えてしまう。しかも、ホンダのバイクで事故ったからといって設計者の名前も出てくるし、いくらモンスターバイクでウィリーしたから転倒しても直線道路で障害物もなく死亡に至るなんて…それにスティーブン・キングが交通事故にあった日が近かったから、スティーブンが死ねば良かったというのにはさすがにゲンナリさせられてしまう。
 文章はよく事象を表していて的確でよくできたレポートのよう、場の空気感や所作からでる感情の揺らぎのような表現は無く、フランスではベストセラーになったようだけど、フランスの個人主義の香りに共感されたような気がしてしまう。