還暦を迎えた女性二人と16歳の青少年の三人がツリーハウスへちょっとした家出をして興る人生のふれあいを描いた秀作と3遍の短編。
独身のまま還暦をすぎた姉のドリー、そして長らく彼女に仕えた家政婦のキャサリン、そして両親を亡くして引き取られた青少年が語り役となって話は綴られる。登場する人たちの風情や面影がとてもよく浮かんでくる、こんなんに文章が上手かったことにティファニーで朝食を読んだ時には気づかなかった。きっとヘップバーンの映画を観たせいなのだろう。
三人で薬草を採取するために草原の中を歩み、家の中でぐつぐつと煮込みながら水腫の薬を調ぜる。姉妹のいさかいから三人は草原にあるツリーハウスへと逃げ込むのだけど、そこに老齢の判事と若い青年が加勢することになり、各々の人生の一コマがあかされ、巧みな文章に人生の風合いが薫ってくる。
3作の短編は長編のネタ話を書き留めたような感じがするけれど、じわじわと漂う空気感が心理的な妙がある。