若くて美貌の主人公は年齢を重ねても皺もよらず、若さを維持しているけれど、彼の肖像画は醜く老いてゆく。英国には『賢者は若さを望まず』という言葉があるようだけど…
肖像画が描かれた青年時代から始まり、悪友の不徳な閑言に甘美を覚えてしまう。そして過去の不埒な生き方をした悪名な人の話がつぶさに語られると既に中年の入り口に立っている。それでも若さにという言葉があてられるほどに老けていない。
それにつけこんで不道徳な行為を重ねて時を貪ってしい恨みを買うのだけれど、なぜか恨みを抱く者の方が災いに遭遇してしまう。それほどに運力が強いのならば、一廉の者になれたであろうに、なんと無為な人生なんだろう。教養が無かったわけでもなかろうに、朱に染まるということなのだろうか…
老いて顔に穏やかさが滲み出るようにしたいものだと想う。