長編としては5作目にあたる。人気のある代表作からは漏れているのがとても不思議なぐらい傑作だと思える。それはきっと、ハードボイルドよりハードサスペンスになっているからではないだろうか…
どうみてもマーロウは3回死んでいる。主人公だから死なない、それはサスペンス・ヒーローだからであり、ハードボイルドの境地とは違い、彼はタフというより無謀だ。でも、そこがエンターテイメントで面白い。マーロウは何故か要因の絞り込みが早くて、なぜそれが分かるのか不思議なのだけど展開の速さは小気味良い。
マーロウの冗談が粋なわけだけど今回は飛びすぎて、ンって思いながら文章をさらうことになった。年の嵩がいかないと随分と分からないような場面が顔を覗かせる。それにしてもマーロウの若さでそこに至ることに敬服の念を懐く。
依頼者の家庭事情を本人が話すのだけど、なんだか信じられない。それとも過ぎたるは及ばざるがごとしなのだろうか、たしかに反動の出る話はよく耳にする。それにしても込み入ったストーリーであり、マーロウはタフで無謀で洞察力の深い人物だった。