名前のないカフェを読んでみた  ローベルト・ゼーターラー 著  浅井晶子 訳

  お店の名前がなくてもお客さんはふらりとやってきて、居心地がよければ常連になってゆき、彼らの日常がお話になってゆく。


 カフェということなのだけど、飲まれているのはビールやワイン、そしてパンチが多いようで、つまみは胡瓜の塩漬けぐらいしかないのに少しばかり驚く。お店はウィーンの市場の端に位置しているようでなんだかざわざわした感じをうけるのだけど、そうでないかもしれない。
 店主やお客さんの日常がありふれた風情を描いているけれど、どちらかといえば感傷っぽい気がするし、音楽の都という風情はないようだ。しかしその分、どこでもみかける多くのひとたちであり、それが小説になっていて風合いが浮かんでくるところがとてもよい。
 一日汗をかいてはたらき、ビールを飲みほっとする。それでよいのではないだろうか。