十二月の十日  ジョージ・ソンダーズ著 岸本佐和子訳

  10編からなる短編集。2019年の作品なので『リンカーンとさまよえる霊魂たち』の翌年に出版されている。すべての作品が翌年に書かれたとは言えないけど、同じ雰囲気を持っていて不安定でざわついた感じになる。


 モチーフとして書かれているのは、正義、倫理、道徳、差別なのだと思うけど、常日頃に起きる事件を強度にデフォルメしており、結構おぞましい描写も含まれている。

 本の題名は最後の短編なのだけど、これがまたよく分からない。真実と妄想は紙一重なのかもしれないけど、少年はいるのだろう、でも少女はいないのだろう。マイナス12度の湖で生息する動物は何だろう?しっぽがあるようだけど、氷の張った水面にはいないようだ。