『ジャズピアノ』というタイトル、しかも上下巻と2巻の大作なんです。サブタイトルに歴史から聴き方までと銘打ってある。表紙がこれまたいかにもジャズなんで、思わず読んでしまいました。
この表紙を見てとても不思議に思ったことは、ジャズに関することではなくて著者の名前。米国人のように思えるけど、訳をされた方の名前がないのです。米国生まれですが、日本の大学で教鞭を取られた方のようで、日本語で書かれているのです。なんかそれだけで感動してしまいました。一般的な知名度はなくても世の中にはすごい人が結構いるもんです。
さて、上巻はデューク・エリントンやカウント・ベイシーなどの楽団が出てくるのですが、どちらもピアニストでアレンジャーでリーダーです。でも指揮者のイメージが強いし、ほとんど聴かないものだから、読んで改めてなるほどと思う次第です。
でもそれより、アート・テイタムの凄さがわかりました。それからファッツ・ウォーラーを知って動画を観ましたけど驚きです。もっと驚いたのはホロヴィッツがテイタムの演奏を聞いて驚いたってことです。そういうことが知れただけでもこの本は興味深いです。文章が学術論文的でありながら情緒を含んでいる書き手には滅多にお会いできません。
下巻になると知っている方々が登場してきて面白いです。なにせ、ピアノの演奏技術も分からないし、音もリズムもとれなくてただひたすら聴いて、いいなぁーと思っていたアーティストの良さが解説されて楽しいです。でも、左手の動きについてはわかりにくいですね、なにせベースが入っていると聞き取れません。そう思うとオーケストラに指揮者って本当に凄い人たちだと思います。まぁなんでも自分でやったことのないことは技術的な深さは理解できないようです。でも、絵でもそうだけど単純に観て圧倒されるものはやっぱりすごい。まぁそれでも潜在的に学習してきたことがそうさせるのでしょうけど。でも何が好きかというのがあればよく、それに理由はいらないし不要でしょう。
フリージャズにも話は及んでますが、トニー・ウィリアムスとオーネット・コールマンが共に演奏しているんですね。時代が過ぎるにあたり、いろいろなジャンルの音が融合されていくわけですけど、こころに残るのはメロディラインのような気がします。