棲んでいる幽霊は18世紀のアイルランドの詩人アイリーン・ドブ・ニコネル、彼女の歴史を追いながら今の生活が混じり合う詩的な散文。
描かれているのは詩人であり、描いていいる女性もまた詩人。作家の日常が子育てや家事に追われて時間が切迫していて、棲んでいる詩人の女性の出来事もまた切迫している。なんだかいつも強迫観念に追われているように感情の揺れが大きく散文といえど詩なんだと…
アイリーンの詩が巻末に載っている。日本語と英語とアイルランド語らしいが翻訳のアプリはスコットランドのゲール語だと表記される。随分と詩的な日本語で上手に訳されていると思う。その詩は連歌のようにつながりがあり、各編の流れに沿って作家と18世紀の詩人が時を紡いでいる。詩人の歴史と作家の今は随分と違うはずなのに同じ空間に引き込まれる。