万延元年のフットボール  大江健三郎 著

  万延元年は江戸時代で1860年、桜田門外の変があった年なので、その年にフットボールはなく、その100年後に結びつけた小説。


 とても病んだ精神の家系に産まれた三男と四男の兄弟を軸に話は進む。なぜだか彼らに集まる人たちもまた精神を病んでいるかのようであり、無理やりにありえそうもない展開でひたすら暗澹たる空間が漂う。
 100年も前の家系が起こした一揆を細やかに分析して、起こした暴動に対比させてリンクさせようとしているのだけど、そうすればするほどに無関係であることが明白になる。そもそも一揆と暴動はまるで違うものなのにわざと悲惨な境地であるかのように繕っている。修飾語はどれも大仰でグロテスクであり悍ましく矮小のように感じる。しかも成れの果ては陳腐であり、なにもないのである。
 どのような状況であっても、きっと一歩を踏み出す意思こそが作家の体現している事への思いなのでしょう。