AI 2041を読んでみた カイフー・リー チェン・チウファン 著 中原尚哉 訳

  AIの進歩により、日常生活がどのように変わっているかを10のテーマに分けてSF風短編小説に描いている。単にAIの技術的変化と効能について述べられるより、身近な生活空間に活きる人の息遣いがリアルなイメージを湧きたててくれる。

 著者は中国のインターネット黎明期にGoogleで活躍した二人で、一人はSF作家に変身しており、文章のテンションと展開の妙はSF小説として読んだだけでも面白い。

 自動運転は残念ながら2041年になってもレベル5に到達していないようで少々以外であった。そうであっても区域的にはレベル5が進むと予想され、道路にセンサーが設置され、交通管制システムが図られるであろう。運送に関わる人たちが多いことを考えると緩やかな移行は労働のミスマッチを緩和してくれることだろう。



 ここに書かれたいくつかは、攻殻機動隊やサイコパスのアニメを見るとより実感が湧くことだろう。AIは知的判断を代替してゆくものであり、未来とは人の考える夢な部分なのでだから、その夢に向かって技術を使っていると考えれば、あながち御伽噺が予測であっても不思議ではない。

 2041年に衣食住が無償で支給される状態になるとは思えないが、いずれはそうなるだろうし、国境も意味を無くすだろう。そして、人の欲求がどのように変化するかは全く分からない。少なくとも貴重性であったり、収集の最大化はなんらかの形で残されて人の欲求をくすぐる要素は作られるのだろう。でなければ人の生きる力は漸減してゆくのではないか。貴重性を求めたり、蒐集家でもない人の方が多いのだが、そういう区分すら無くなったとき、おそらくミュータントになるのであろう。