ビリー・サマーズを読んでみた  スティーブン・キング 著  白石朗 訳

  ビリー・サマーズは殺し屋、一流のスナイパーだ。仕事のために小説家を偽装するのだけど、実際に描き始めてみたら小説家になれる希望を抱く風変わりな物語。


 表紙がビリーとしかないけれど、これは上巻で下巻にサマーズとある。上巻の出で立ちはターゲットが現れるるまで装っていた小説家のようだ。
 請け負った仕事はどうみても捕まるシチュエーションであり、脱出ゲームかのようだ。一流のスナイパーが請け負うとは到底思えない。ホラー小説を書かせたら緊張したスリルな展開は抜群であるのに仕事自体はあっさりと終わり何の緊張もない。それよりも仕事が始まる前までの近所付き合いの方が丁寧に書かれていて子供との交わりがほのぼのとする。
 後半はスナイパーなのに接近戦ばかりになるし、話の展開は小気味良いのだけど構成に違和感を感じてしまう。でもテレビのドラマシリーズにしたら良い間隔で事件が起きるところはさすがと思える。ビリーが自叙伝を小説にするなかで、イラク戦争後の維持管理で派兵されるくだりがもっともリアリティで緊張が漂う。ビリーの書いている小説の方が滑舌でエネルギー感を感じられるところが面白いしスティーブン・キングらしさが出ている。