読み終えるとジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズのデュエット曲、愛と青春の旅立ちが浮かんできた。少年は青年に旅をした。
1950年ごろの西部テキサスから二人の少年が馬に跨り南へと下る日々が長いページを割いている。情景の描写は緻密でいて、その眼を通した者の風情をよく表しているおかげで起伏のないストーリーでも退屈することなく読める。メキシコの牧場で雇われる頃から展開は変わるけれど詩的な文体は変わらず、相乗的にうねりが大きくなる。
ブッカー賞に選ばれていないのが不思議である。長くて比喩の多い形容詞が選考者に嵌まらないのだろうか…文を読むに楽しい本だと思う。