ブラッド・メリディアンを読んでみた コーマック・マッカーシー 著 黒原敏行 訳

  1833年生まれの少年が荒くれ者たちと荒涼とした大地で悪事にまみれながら生と死の狭間をゆれうごめいていく物語り。


 1850年前後のアメリカ西部とメキシコを舞台にしている、その少し後の時代になる『美しいすべての馬』は青春期を描いた物語で倫理観の漂っていたけれど、この物語には殺伐とした悪事が大部分にわたって展開される。でもその時の主役は少年ではなく大尉であり、少年の話題は少ない。
 荒くれどもと離れて一人で暮らすようになると一気に時間が過ぎて壮年になるのだけど、少年時代との違いはわからない、少年の持つアイディンティに変化は無いようでそこがスティーブン・キングの書いたビリー・サマーズが気に入った点だったのだろうか?
 当初より出てくる判事とは何者なのか、少なくとも人には思えず悪魔のようだ。悪魔もまた神であるのだろうからあのように賢明な言葉を投げかけるのだろう。
 作家の特徴である形容詞が何重にも押し寄せてくる文体はより一層積もり、何を表しているのか迷子になり、それが判事の言葉と少年の行動を醸し出している。
 思わずショスタコーヴィッチの交響曲14番を聴いてしまった。