誘拐を読んでみた  G・ガルシア=マルケス 著  旦敬介 訳

  麻薬王パブロ・エスコバルが誘拐を企てて自らの保身を政府に確約させて投降するまでのドキュメンタリーをあのマルケスが描いた作品。


 マルケスが作家として間もない頃とは言えノンフィクションを手がげていた。イマジネーションとリアルが交差する作風だとばかり思っていたので少々驚いた。でも、南米独立の英雄ボリバルの伝記も書いているのはこういう履歴があったわけだ。

 エスコバルの犯罪証拠が米国にしかなく、自国のコロンビアでは議員でもあったというのには驚くし、これだけの誘拐事件を起こしながらも当人が捕まらない。やはり治安国家というのは良いことだと痛切に思う。
 複数の誘拐事件がそれぞれに展開され、時系列がカットバックのように前後するので読んでいることがデジャブのような妙に浮いた感覚になった。ずっと緊張した場面しかないので時間の感覚が鈍るのだけど、随分と長い期間の拘束に耐えられたものだと思う。
 しかしこういった国の大統領をするには胆力と体力と信念が異常に強固でなければいけないことだけは分かる。