オーディオの面白いところは、古いものでも新しいものでも組合わせてみると意外性があることだと思う。ステレオ録音は1954年から始まり、ちょうどその頃にトランジスタアンプも出始めた。レコードはCDになり、デジタルソースへと変わったけどレコードの需要は未だにあるし、真空管アンプも健在である。スピーカーも100kHzまでも再生するような機材まで出来たけど、DACフィルターは22kHzでカットされるような機能もあるわけで、進歩がそのまま音楽再生の向上なのかというとそうでもないように思える。
イギリスBBCが仕様を決めたLS3/5aというモニタースピーカーがあり、ハーベス、KEF、スペンドールやRogersといった英国の老舗メーカー各社から発売され、現在でもスターリンやファルコンなどのメーカーが販売しています。
家にあるのはRogersで1972年に発売された当時は15Ω仕様で、1988年に11Ωへと変更されました。ちょうど購入したのが仕様変更されたばかりですから、四半世紀近く愛用していることになります。
アンプをLuxman L-550AXⅡにして聴いてみると少々驚きました。音の輪郭が鮮明になり低音域の押し出しも強くなったら、音の広がりや音楽の表現も鮮やかになってオーケストラを聴いても愉しいのです。LS3/5aのツィーターは少々きつい音になり易いのは衆知なところで、ウーハーより低めに耳の位置が低めにくるようにセッティングしてあり程よいバランスです。
音楽ソースはDSD、CD、レコードのいずれでも気持ちよく音楽を聴き続けられ、カートリッジの特性も分かりやすく、AT33Saを聴くと分解能の高さが上手くフィットして繊細さが増します。今までは甘い緩やかさがあるスピーカーだと思っていましたが意外です。
音がクリアになった分、オーケストラの各楽器の定位も分かりやすく、ロックではバスドラムの音がしっかりしてタイトな感じがリズム感を増し、ジャズではベースのうねりがヨットのキールのように効いて、ホーンのアドリブが活きてきます。
今まで繋いでいた300Bの真空管アンプTU-8600RをSonus FaberのMinimaFM2に接続します。プリアンプはChriskit Mk6で12AX7*4、12AU7*2の真空管アンプです。
MinimaFM2と300Bの相性も良く、低音域もやや膨らみ気味ですがしっかりと出ていて、高音域の艶はより香り立つ感じです。このプリアンプは少し甘いところがあるのですが、これがまた女性ヴォーカルやヴァイオリンを聴くとぐっときます。
これに旭化成のAK4499を載せたTopping D90というDACを繋ぎます。そうしたらこれもまた驚きです。とっても綺麗な音が出てきます。分解能が高く音の断面が鏡面のような切れ込み方をするDACなのですが、艶っぽいところはそのまんま出てくるので、とても古いスピーカーには思えません。
DSD64のダイアナ・パントンが唄うムーンライトセレナーデを聴くと本当に月へ連れてってという感じになります。清楚でちょっと童心っぽく甘える感じの歌声の表現が実にクリーンな感じで出ます。
それにマイルスのリラクシンを聴いても、リズムを刻むシンバルのハイハットな響きは切れが良く、ベースは躍動感が出て音が気持ちよく飛び出てきます。98kHz24bitのソースであれば、パシッとした音の切れ方やドシっと力強い一瞬の飛び出しが十分に堪能出来て愉しいです。
スピーカーが古くても新しい機材との組み合わせで往年のイメージとは違った音場が再生されるのは実に面白いです。