EAR834Pフォノイコライザを買ってみた

  EAR834Pは真空管アンプで有名なティム・デ・パラヴィニーチの作ったフォノイコライザです。MCの回路にはトランスが組まれていて彼らの造るトランスには定評があり、それを期待して買ってみました。


 このフォノイコライザは真空管が増幅に使用してあり、13D16という聞き慣れない型式になっています。どうもECC83(12AX7)と同じ形式のもののようですが、社内品番の13D16という呼称を表示しているようです。これは12AX7を選別しているためと言われています。
 初期型ではボリュームのないタイプでしたが、これはボリュームで出力を調整できるようになっていて、使われているのがアルプスのRK27のようで安価でギャングエラーが少ないので、自作する人の定番品です。電源トランスはトロイダルトランスでノイズ低減を図りながら、電源部と信号増幅部を仕切りを入れて遮蔽しており、ノイズ対策はしっかり施されています。
 MMとMCの切り替えは背面に押しボタンで操作し、押し込んだ時がMCになります。MC回路には増幅用のトランスが基盤に組み込まれており、これがパラヴィニーチのトランスと思われます。信号回路のコンデンサにMKTやWIMAが使われているのが良さげです。年代によって使われているコンデンサが違うようですが、音色はどうなんでしょうか?気になります。







 音質については3機種のSPUで聴き比べてみました。まずはGEです、これはオルトフォンの初期のタイプで出力が小さいのですが、何の問題もなくGEらしい骨太でどっしりした音が奏でらえます。オルトフォン昇圧トランスJS6600と比べると明瞭さが増して低音がタイトになりますが、堂々たる鳴りっぷりは変わりがありませんし、暗い部分のトーンもよく出ています。
 次にETHOSに変えます。これは最近のSPUでハイレゾ時代のメリハリの効いた解像度を高く感じさせます。これも持っている特性がそのまま綺麗に出てきて、さらに音のしなやかさが加味され、とてもリフレッシュでありながら力強さを感じながら聴けます。
 そしてSYNERGYです。とても力量感あふれるカートリッジなのですが、なぜかマイルドさが増えて穏やかに感じます。この3個のカートリッジでは最も出力が高いのですが、出力ボリュームの位置は3個のなかの中央になるので、インピーダンスの違いが出るのかもしれませんが、SYNERGYの違った面を観るには面白いです。

 輪郭が整っていながら、しなやかさと重心の低い安定感をもたらしてくれます。EARの中では安価ですが定評ある音で、そのうちMMカートリッジも聴いてみようと思います。