ゼンハイザー IE600を買ってみた

  夏場になるとイヤフォンやヘッドフォンを多用することになるので、長時間使用しても聞き疲れずバランスの良いものをと考え、ゼンハイザーは持っていないのでIE600を買うことにした。

 2022年3月に発売された機種で定価は10万円を超してしまう、なんだか色々なものが高くなってしまった。価格と音質がマッチングするかと言うと好みの問題もあって合うとは限らないところが悩ましい。そうは言ってもIE900になると更に価格は跳ねがるわけでステータスとしての意味合いも加わるのだろう。


 筐体は3Dプリンタで製作されているそうで、ならば金型費用分コストが下がりそうなものだけど、かえって製作方法そのものも宣伝文句の一つになっている点は販促の妙味なのだろう。それと中の空洞構造を好きなように構成できるので音の響きを設計しやすいのかも知れない。表面はサンドブラストしたような地合いでいかにも強度アップされているかのようで頼もしい。コネクターはMMCXで固くはなくて脱着が容易なのが嬉しい、難点はグランド側の接点不良を起こしやすいのだけど、はめ替えをしないので大丈夫でしょう。
 装着した感じはとても良く、シュアタイプの耳掛けも収まりが良い。ケーブルと衣服の擦れる音はしないし、柔らかくて癖もつかないからとても使いやすい。4mmのバランスケーブルもあるので他のイヤフォンに使っても良いかなと思える。
 音質としてはまさにウェルバランス。オーケストラを聴いても各楽器の個がありながら相互に溶け込んだ心地よさが快適で狙い通り聞き疲れするようなことはなさそうだ。とくにヴォーカルは一歩前へきて張と艶が醸し出される。ソプラノの高音域に伸びてゆくところはそれなりであるけれど少し下がったところは心地よく身をゆだねることができる。


 素直な特性のせいなのかアンプの特徴もよく出ている。Luxman p-1uで聴くと低音域がつよくなり全体的にトーンが下がり安定感と音の厚みが増してくるし、ぺるけ式のアンプでは中音域のふくよかさと響の良さが残る。TOPPING DX7proだとオペアンプのキレの良さが如実にでてタイトで堅実な音になる。
 実によくできたイヤフォンで価格だけのことはるなぁと感心する。でもどこまでもウェルバランスであり、高音域の美音はFinal A5000、低音域のしっかり感はJVC FW-01で価格は半分になる。でも長く使おうと想うのはIE600でリファレンス機としてでてきたようなものに思える。