不思議な物語ばかり描く作家だなぁと、一体どこからそういった想いが浮かび上がるのか謎めいた人のように感じる。
記録を綴ったのは『わたし』なのだけれど、姉や弟はでてくるけど本人はわからない。名前が出ていたのかもしれず、南米の名前なので覚えられなかったのだろうか。でも殺された人の名はよく判るし、殺した双子の名もよくわかる。それに30年もかけて犯罪の聞き取りをするなんて随分と執念深いように思う。
予告は殺害を止めてもらおうとして吹聴するのだけど、なぜか止めに入る行為はうまくゆかず、屠殺ナイフで切り込む描写は斬殺をよく捉えていて悍ましい。そこまでの成り行きに関わった人の聞き取りに時が立っているのは、その人たちのその後を描くためなのだろうか。でもそこは蛇足のようにも思える。