城 を読んでみた フランツ・カフカ著

 随分と旧い本を読み返しているけれど、その隙間が30年という空間であり、思い気づくものはその間に蓄積された自身の人生だったかも知れないのだけれど、受ける全体の印象に変わりはない。何ゆえにこれほどに漫然としているのだろうか。変身や審判にあったような風変わりな不安は感じないけれど、どこまでも変化する砂を想い起してしまう。砂で覚えがあるのはカミュと阿部公房であるけれど、同じ酒の薫りがする。
 城は観えるようで届くことができない管理の場所のようだから、権力の中枢なのだろうかと思える。そうであればもっとサスペンスのように描いてくれたら読むスピードも速くなるだろうにと思うのだけど、組織の中心は空であり、ドラマチックな展開の中にあるのではなく傍らあることを画いてあるのだろうけど、機械に針がついていて圧死させる『流刑地にて』のようにスリルが備わっていた方がやっぱり読む易く思う。でも、読む易くしては城の本題から離れるのだろう。

 書かれた順番から診れば、審判の続編にあたるのだろう。不思議なのは、Kはいつでもモテるのだ。そこだけが奇妙に懸け離れた話に見えてくるし、論理的な考え方においても事実認識が違うかのように感じる点がままある。どのような話にも空想のようなおとぎ話なような部分はあるけれど、人の考えとして長々と描写されている点は特別だ。グローバルな世界になり、文化の違いを感じられる時代であるほど、育まれた環境や文化が物事を捉える構成力を持っているかに気づかされるけど、城の世界は奇異ではあるが身近でもある。この特異点が漫然とさせるように思える。だから、生きていればそれで良いのだと思うのだけれど、人はパンのみにて生きるにあらずという言葉もある。しかし、城には神はおらずひたすらに生きるのみである。