悲しみのイレーヌを読んでみた ピエール・ルメートル 著 橘 明美 訳

 ピエール・ルメートルの本を2作読んだけど、着想と構想がとてつもなく素晴らしい。しかも文の緩急が絶妙だし、一文一文のリズミカルなテンポに引き寄せられて読み込まれてしまう。
 そう、読んでいる側がいつのまにか文体の中に入ってしまい、しまいには痛みすら感じる嵌めに陥る。


 読み始めて直ぐに、あれ?読んだことあるかとデジャブのような感覚に襲われる。
でも、事の顛末については何も覚えていない。
 きっと『その女アレックス』に出てくる捜査官たちの描写が似ているというか、
同じ表現があるせいだと思われる。この本はデビュー作でパリ警視庁のヴェルーヴェン警部3部作の1作目、『その女アレックス』は2作目にあたる。

 熾烈な描写は、ドラゴンタトゥーの女の映画を思い出してしまう。欧米の錯綜した精神はいつも異次元のように思える。描写やテンポ、展開どれをとっても一級品だけど、構成の凄さは別次元で顕われる。第2部を読めば解かります。

 それにしても、邦題は余りにも無神経で読者を傷つけている。現代はフランス語Travail soigné 直訳だと”丁寧な仕事”になり、売れそうな邦題でないと思えるのは判るけど、
’悪魔は詳細に宿る’の方がマシである。